Archive for 11月, 2010:

全国茶品評会で1等 農林水産大臣賞 受賞

2010.11.19

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この度、普通煎茶10kgの部において、栄えある農林水産大臣賞を受賞できましたことを大変光栄に思います。
全国茶品評会とは、お茶日本一を決める大会です.
このたびは20都府県から823点の出品がありました。
その中でも「煎茶10kgの部」は、全国の茶農家の精鋭が集い競い合う最も競争が激しい部門なのですが、そこで一等賞を受賞することができました。
また奈良県のお茶が続続と上位入賞し、その結果、産地賞を獲得することが出来たことは、この上ない喜びです。
今回の出品につきまして、たくさんの方々にお世話になったこと、本当に感謝しております。
奈良のお茶は今までは知名度が低かったのですが、これをきっかけに“大和茶”が少しでも市場に出ていくことが出来て、多くの方から「美味しい」と言ってもらえるように、さらに精進してお茶づくりに取り組んでいきたいと思います。

3年前から大会への出品をめざして、茶の木を深く刈り、目立ちの荒い手摘み用の茶園を仕立てました。
シッカリした根を育てるために、有機栽培で土作りに取り組み、さらに茶園の負担を減らすために、年に1度しか茶葉を摘み取らない栽培を行ってきました。
摘採の10日前からは、旨味を最大限に引き出すために被服資材を30aの茶園に覆います、これが大変な作業で風が吹いては外れてしまうの繰り返しで何回もやり直しました。
今年の5月8日、120名の方に御協力頂き、早朝から1芯2葉の手摘みで、78kgを半日かけて摘み取って頂きました。
30aの畑で良い芽だけを一つ一つ摘み取る作業は本当に過酷な作業ですが、大人から子供まで自分の事の様に頑張って頂き、綺麗に摘み取ることが出来ました。
そうして摘み取られた78kgの茶葉が製茶の工程を経ると15kgになります。その茶葉を精製し再乾燥することでさらに旨味が引き出されます。
このようにして出品茶を作りました。
出来上がったお茶の外観はスッキリとした冴のある深い緑色で、その形を例えると木綿針の様に細く、堅く、“つるーん”と光っていて、全体の長さが揃っています。
これこそが、私のイメージする芸術品のような茶葉の佇まいなのです。
水色(すいしょく)は透明感のある黄金色で、香気は甘さの中に爽快な若芽の香りがあります。
味は、ふくよかな旨味の中に上品さがあります。
是非、ひとりでも多くの方に日本人が培ってきた煎茶の魅力をお伝えできればと願っています。

出会い

2010.11.18

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最近ものすごい勢いで沢山の方と出会う機会が多くなりました。
これはすべてお茶のご縁です。
少し前に雑誌で紹介されたのをきっかけけに、月ヶ瀬の山のてっぺんまで、何度もお茶を買いに来られるお客様がいらっしゃいます。
東京で日本茶のカフェによく通っておられるそうで、是非美味しいお茶を飲みたいと家族で来られました。
これは大変だと思いましたが、我が家の茶室でいつものようにお茶の淹れ方を実演しながら、お茶を楽しんでいただくことにしました。想いが通じたのか皆さん喜んで頂き、お子さんまで「美味しいもっとほしい!」と言っていただき最高の気分でした。
沢山注文頂きお茶を取りに行っている間に、偶然サルが庭を歩いていたみたいで、奥さんが「サル飼っているんですか?」って、「私もサルを見たのは一度しか無いんです。」お子さんも「またサルが来るかなあ」って。
「いやー私はサルには来てもらいたくないです」って答えると、皆で大笑いしました。
今でも仲良くして頂き、お友達を沢山連れて来ていただきます。こんな出会いが何よりも楽しいですね。

私のお茶を飲まれて美味しいと感じられたかどうかはひと目で分ります、今までの皆さんが納得していただいた顔は私の勲章として大切に保存したいと思います。
美味しくなれという想いで淹れると、気持は伝わるんですね。

茶の木

2010.11.12

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今日は、茶園の改植(弱っている茶の木を植え変える作業)を行っていました。
この畑は36年間立派に茶の芽を吹き、初回茶園品評会で一等知事賞を頂いた畑です。その一部に大きな石があるため生育が悪い箇所をユンボで茶の木を抜く作業です。
良質な茶の木を作るには、根の張りが重要です、排水がよく柔らかい土があれば立派な茶の木が芽吹いてくれます。
自分が10歳の頃、この畑にお茶を植えるのに親やおじいちゃんや、沢山の人に手伝ってもらった記憶がよみがえり、弱った茶の木を抜く時、少し胸が痛くなりました。
背が低かった私は、今は亡きおじいちゃんの甚平(じんべい)を着ると足まであつたので、みんなに笑われた記憶が懐かしく思えました。
そして、抜くところを最小限にすることにしました。

神の瞬間

2010.11.10

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小学校の頃、お茶時期になると自宅の横にある茶工場からガチャンガチャンと精揉機(お茶の形をつける機械)の音と、甘い香りに引かれてよくのぞきに行っていました。もっと小さい頃は、刈り取られた茶の芽の中に入って遊んだ記憶があります。
幼い時に感じた新芽の香りとお茶を蒸した時の甘い香り、
私は今でもあの香りと機械音がここち良いのかもしれません。
緑茶を製造する工程で一番大切なのは“蒸し”です。
機械化された現在でも最適な“蒸し”を決めるのは人の感性です。

蒸し機は蒸気量・撹拌・角度で、設定しますが、最高の甘い香りと綺麗な色が出るところが一ヶ所しかありません、それを見つけ出せるのは人の感性。
それはまさしく、神が下りてくる様な一瞬の時なのです。

想い

2010.11.09

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お湯を冷まし、それを急須に丁寧にそそぎ入れ
少し待って、茶葉が八分目開いた状態が淹れ時です。
透明な青みを帯びた水滴が、緑の香りを漂わせながら
湯のみを満たしていく
この時(とき)と間(ま)が、私は好きなんです。
それは、お茶を介して目の前の人とつながっていくと
確信できる瞬間だからです。
きれいな水や空気、緑に囲まれた地球を大切にしようと言われながらも
誰もが、身の回りのさまざまなことを抱えながら懸命に生きています。
そんな中で、いつの時代も、私たちが最も大切にしないといけないのは
「人と人のつながり」だと思うんです。
“お茶でも一服”は、それを演出する先人の知恵ではないのでしょうか。
                                    井ノ倉光博