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出会い

2010.11.18

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最近ものすごい勢いで沢山の方と出会う機会が多くなりました。
これはすべてお茶のご縁です。
少し前に雑誌で紹介されたのをきっかけけに、月ヶ瀬の山のてっぺんまで、何度もお茶を買いに来られるお客様がいらっしゃいます。
東京で日本茶のカフェによく通っておられるそうで、是非美味しいお茶を飲みたいと家族で来られました。
これは大変だと思いましたが、我が家の茶室でいつものようにお茶の淹れ方を実演しながら、お茶を楽しんでいただくことにしました。想いが通じたのか皆さん喜んで頂き、お子さんまで「美味しいもっとほしい!」と言っていただき最高の気分でした。
沢山注文頂きお茶を取りに行っている間に、偶然サルが庭を歩いていたみたいで、奥さんが「サル飼っているんですか?」って、「私もサルを見たのは一度しか無いんです。」お子さんも「またサルが来るかなあ」って。
「いやー私はサルには来てもらいたくないです」って答えると、皆で大笑いしました。
今でも仲良くして頂き、お友達を沢山連れて来ていただきます。こんな出会いが何よりも楽しいですね。

私のお茶を飲まれて美味しいと感じられたかどうかはひと目で分ります、今までの皆さんが納得していただいた顔は私の勲章として大切に保存したいと思います。
美味しくなれという想いで淹れると、気持は伝わるんですね。

茶の木

2010.11.12

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今日は、茶園の改植(弱っている茶の木を植え変える作業)を行っていました。
この畑は36年間立派に茶の芽を吹き、初回茶園品評会で一等知事賞を頂いた畑です。その一部に大きな石があるため生育が悪い箇所をユンボで茶の木を抜く作業です。
良質な茶の木を作るには、根の張りが重要です、排水がよく柔らかい土があれば立派な茶の木が芽吹いてくれます。
自分が10歳の頃、この畑にお茶を植えるのに親やおじいちゃんや、沢山の人に手伝ってもらった記憶がよみがえり、弱った茶の木を抜く時、少し胸が痛くなりました。
背が低かった私は、今は亡きおじいちゃんの甚平(じんべい)を着ると足まであつたので、みんなに笑われた記憶が懐かしく思えました。
そして、抜くところを最小限にすることにしました。

神の瞬間

2010.11.10

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小学校の頃、お茶時期になると自宅の横にある茶工場からガチャンガチャンと精揉機(お茶の形をつける機械)の音と、甘い香りに引かれてよくのぞきに行っていました。もっと小さい頃は、刈り取られた茶の芽の中に入って遊んだ記憶があります。
幼い時に感じた新芽の香りとお茶を蒸した時の甘い香り、
私は今でもあの香りと機械音がここち良いのかもしれません。
緑茶を製造する工程で一番大切なのは“蒸し”です。
機械化された現在でも最適な“蒸し”を決めるのは人の感性です。

蒸し機は蒸気量・撹拌・角度で、設定しますが、最高の甘い香りと綺麗な色が出るところが一ヶ所しかありません、それを見つけ出せるのは人の感性。
それはまさしく、神が下りてくる様な一瞬の時なのです。

想い

2010.11.09

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お湯を冷まし、それを急須に丁寧にそそぎ入れ
少し待って、茶葉が八分目開いた状態が淹れ時です。
透明な青みを帯びた水滴が、緑の香りを漂わせながら
湯のみを満たしていく
この時(とき)と間(ま)が、私は好きなんです。
それは、お茶を介して目の前の人とつながっていくと
確信できる瞬間だからです。
きれいな水や空気、緑に囲まれた地球を大切にしようと言われながらも
誰もが、身の回りのさまざまなことを抱えながら懸命に生きています。
そんな中で、いつの時代も、私たちが最も大切にしないといけないのは
「人と人のつながり」だと思うんです。
“お茶でも一服”は、それを演出する先人の知恵ではないのでしょうか。
                                    井ノ倉光博